アメリカのスタンフォード大学心理学部で実験された「スタンフォード監獄実験」が興味深かったので調べてみました。
この監獄実験は結論から言うと、人間の行動は、その人の気質や性格で決まるのではなく、置かれた状況によって決まるということを証明する為の実験でした。
つまり置かれた状況、肩書きや権威 などのポジションによって人の行動が変わってしまうということです。
この実験は労働基準法などで上司という立場を利用したパワハラ、セクハラについてその解説によく用いられるネガテイブな内容ですが、ポジティブに利用した場合に意外に良い影響があるのでは?と考えています。
自分の行動を良い方向にコントロールすることを目的に「スタンフォード監獄実験」について紹介してみたいと思います。
スタンフォード監獄実験とは?
スタンフォード大学の心理学部で行われたという監獄実験です。
心理学者フィリップ・ジンバルドーの指導のもと新聞広告などで集めた普通の大学生などから選ばれた被験者21人の内、11人を看守役に、10人を受刑者役にグループ分けし、それぞれの役割を実際の刑務所に近い設備を作って演じさせるという実験でした。2週間ほどの実験ですが明らかに被験者の行動が変わったことが確認されています。
世界一悪名高い心理実験を映画化!『プリズン・エクスペリメント』予告編
プリズン・エクスペリメントという映画化までされた有名な実験でもあります。過去にはes(エス)という映画も放映されています。
監獄実験の役割演技
人間の行動は、その人の気質や性格で決まるのではなく、置かれた状況によって決まることの証明実験なので、置かれた状況、役割についてリアリティを持たす必要があります。そのため受刑者役は実際にパトカーに連行され、指紋採取、看守たちの前で全裸にさせられ、シラミ検査など囚人と変わらない行動を取らされます。看守役も権威のある格好をし、立場と役割をリアルに作り上げたそうです。
当然の事ながらこれは心理学の実験なので始めのうちは看守役・囚人役ともに「役割を演じている」という意識があったようです。しかし看守役の人間達は次第にその立場に馴染み始め、自発的に囚人役の人たちに対して色々な罰則を与えるようになったそうです。看守は囚人役の人たちにバケツに用を足すことを強制したり、さらに実験として禁止されていた暴力すら振るうようになりました。囚人役の人の中には精神錯乱を起こす人もいたようで、あまりの惨状を見かねた人が警察に通報した事により実験は当初の予定を繰り上げて中止されましたが、その時に看守役のグループは「話が違う」と実験の続行を希望したそうです。
監獄実験の結果について
これほど人の人格を変えてしまった驚くべき監獄実験ですが、大きく2つの実験結果をもたらしました。
権力への服従
強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が、狭い空間で常に一緒にいると、次第に理性の歯止めが利かなくなり、暴走してしまう。
非個人化
しかも、元々の性格とは関係なく、役割を与えられただけでそのような状態に陥ってしまう。
これは職場でも学校でも起こりうる心理現象です。
パワハラ・セクハラ・いじめなどを解説する時によく引用される心理実験だということがわかります。
ポジションで人は変わる
もともと備わっている気質や性格が置かれた状況で変わってしまうのは興味深いことです。負の側面でしか捉えてこられなかったこの実験ですが、例えば自分の気質や性格を良い方向に変えたいと考えた時に、この心理実験に基づき、役割やポジションを変えてみることは意義のあることでは?と考えてます。
もちろん自分の気質や性格は変えにくいものだとこれまでの経験で理解できています。ただこれほどまで人間が変わってしまった監獄実験を知ると少しだけ希望が湧いてしまいます。